医療・福祉の仕事をしていると、
「夜勤を続けるのがつらくなってきた」
「今までとは違う職場で経験を積みたい」
「地元に戻りたいけれど、どんな職場があるのか分からない」
など、さまざまな理由で転職を考えることがあります。
私は医療・福祉法人で10年以上、人事・採用を担当してきました。
多くの応募者と接してきた中で感じるのは、転職がうまくいった人には、必ずしも「経歴がきれい」「条件のいい求人を見つけた」といった共通点があるわけではないということです。
むしろ大きいのは、「今回の転職で何を変えたいのか」が本人の中で整理されていることです。
この記事では、実際の採用経験をもとに、看護師・介護職・リハビリ職・薬剤師の4つのケースを紹介します。
※個人が特定されないよう、実際の採用経験をもとに一部の状況や表現を再構成しています。
なお、この記事でいう「転職成功」とは、単に内定をもらうことではありません。
自分が転職する目的を整理し、必要な情報を集めたうえで、結果として長期的に勤務することができた事例を紹介します。
今回紹介する4人は、職種も転職理由も求人の探し方も違います。
それでも、転職がうまくいった過程には共通点がありました。
- 今回の転職で「何を変えたいのか」が明確だった
- ひとつの求人情報だけで判断せず、自分でも情報を集めていた
- 見学や面接を「自分が職場を確認する機会」として使っていた
- 求人サイト・転職エージェント・直接応募などを目的に応じて使っていた
大切なのは「どの転職サービスを使うか」から考えることではありません。
まず自分の転職目的を決め、そのために必要な情報を集めることです。
ケース①|夜勤を減らしたい看護師が日勤中心の職場へ
転職前の状況
病院で看護師として勤務していましたが、夜勤回数が多く、今後の働き方や家庭との両立を考えて転職を検討していました。
本人の希望は比較的はっきりしていました。
「給与を上げたい」
「もっと大きな病院で働きたい」
ということよりも、今回の転職で優先したのは夜勤のない働き方に変えることです。
そこで、日勤で働ける職場を中心に求人を探し、最終的には日勤中心で働ける職場への転職を決めました。
うまくいったポイント|最初に優先順位を決めていた
このケースで良かったのは、求人を探し始める前から優先順位が比較的明確だったことです。
転職活動を始めると、
「給与も上げたい」
「休みも増やしたい」
「残業も減らしたい」
「通勤時間も短くしたい」
と、希望する条件が増えていきがちです。
もちろん希望を持つこと自体は問題ありません。
ただ、すべての条件を満たす求人を探そうとすると、なかなか応募先を決められなくなることもあります。
この方の場合は、「夜勤のない働き方に変えたい」という軸があったため、求人を比較するときの基準がはっきりしていました。
採用側から見たポイント
看護師の方から「日勤だけで働きたい」という希望を聞くことは珍しくありません。
ただし、「日勤」と書いてある求人なら、どこでも同じ働き方ができるわけではありません。
職場によっては早番・遅番があったり、訪問看護であればオンコール対応があったりします。
そのため、「夜勤なし」という言葉だけを見るのではなく、自分が希望する働き方と実際の勤務条件が合っているかまで確認することが重要です。
▶求人の条件をどう確認すればいいか分からない方は、以下の記事でも詳しく解説しています。

ケース②|訪問介護のパートから施設の正職員へ転職した介護職
転職前の状況
家庭の事情から、訪問介護でパートとして働いていた介護職の方です。
家庭の状況が変わり、フルタイムで働けるようになったことから、正職員への転職を考えるようになりました。
転職活動を始めた当初は、特別養護老人ホームを候補にしていました。
ただ、本当の目的は「特養に入ること」ではありません。
本人が希望していたのは、施設介護を経験し、介護職として仕事の幅を広げることでした。
うまくいったポイント|最初の候補に固執しなかった
介護職の場合、ひとことで「施設」といっても、特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、グループホーム、有料老人ホームなど、さまざまな職場があります。
この方は求人サイトなどで複数の施設を比較し、気になる施設については実際に見学も行いました。
その中で仕事内容や職場の雰囲気などを確認し、最終的には当初考えていた施設形態にはこだわらず、グループホームへの転職を決めています。
採用側から見たポイント
このケースで印象的なのは、転職活動を始めたときに考えていた答えに固執しなかったことです。
「特養へ転職する」というのは、あくまで手段のひとつでした。
本来の目的は「施設介護を経験して、介護職として仕事の幅を広げること」です。
求人を比較し、実際に施設を見たことで、
「自分が経験したいことは何か」
「どんな環境なら働きやすいか」
を改めて考えることができました。
転職活動を始めた時点で、すべてを決めておく必要はありません。
実際の求人を比較したり、職場を見学したりする中で
「自分が本当に優先したいもの」に気づくこともあります。
大切なのは、最初に決めた条件に固執することではなく、
転職する目的からズレていないかを確認することです。
ケース③|地元の情報が分からないリハビリ職のUターン転職
転職前の状況
都市部で理学療法士として働いていましたが、将来の生活を考えて地元へ戻ることになり、Uターン転職を始めました。
そこで困ったのが、地元の医療機関について十分な情報を持っていなかったことです。
地元出身であっても、学校や就職で長く離れていると、
「どんな病院があるのか」
「それぞれ何に力を入れているのか」
「自分が経験したい分野のリハビリができるのか」
といったことまでは分からない場合があります。
うまくいったポイント|足りない情報を補うためにエージェントを使った
この方は転職エージェントも利用しました。
最初に利用したサービスでは担当者との相性が合わないと感じる部分があり、別のサービスからも情報を集めることにしました。
自分が希望する分野や、今後経験したい業務などを伝え、候補となる病院について情報を集めています。
ただし、転職エージェントから紹介された情報だけで勤務先を決めたわけではありません。
実際に病院を見学し、面接でも自分から仕事内容や職場について質問したうえで、最終的な転職先を決めました。
採用側から見たポイント
このケースでは、転職エージェントを利用したこと自体よりも、「自分に足りない情報を補うために利用した」ことがポイントです。
住み慣れた地域であっても、その地域の求人状況や各医療機関の特徴まで詳しいとは限りません。
特にUターン・Iターン転職では、自分だけでは情報を集めにくい場合があります。
そういうときに転職エージェントを情報収集のひとつとして利用するのは、合理的な使い方だと思います。
一方で、担当者から勧められた職場が必ず自分に合うとは限りません。
「情報を集めるところでは頼る。最終的には自分で確認して決める」
という姿勢が大切です。
▶転職エージェントを使うべきか迷っている方は、以下の記事も参考にしてください。

ケース④|調剤薬局から病院へ転職した薬剤師
転職前の状況
調剤薬局で勤務していた薬剤師の方です。
これまでとは違う環境で経験を積みたいという思いから、病院薬剤師への転職を考えるようになりました。
ただ、同じ薬剤師でも、調剤薬局と病院では仕事内容や求められる役割が異なります。
本人も病院勤務の経験がなかったため、
「病院によって何が違うのか」
「これまでの経験をどのように活かせるのか」
というところから情報収集を始めています。
うまくいったポイント|これまでの経験を整理した
このケースでは、薬剤師向けの転職エージェントなども利用しながら、病院ごとの特徴や業務について情報を集めました。
ただし、紹介された情報だけで応募先を決めたわけではありません。
気になる病院について本人でも情報を確認し、応募書類や面接では、
「病院勤務の経験がありません」
だけで終わらせず、調剤薬局で経験してきたことを病院でどう活かせるかを整理していました。
また、複数の病院を見ることで、業務内容や仕事の進め方などにも違いがあることが分かり、比較したうえで転職先を決めています。
採用側から見たポイント
未経験の分野へ転職するときに大切なのは、「自分の経験を整理してどう活かすかを考える」ことです。
採用する側も、応募者がまったく同じ仕事をしてきたかだけを見ているわけではありません。
これまでの仕事の中で、
「何を経験してきたのか」
「その経験を次の職場でどう活かせるのか」
を説明できる人は、採用側としても評価しやすくなります。
これは薬剤師に限らず、医療・福祉職で別の分野へ挑戦するときにも同じです。
4つの転職成功事例を比較
ここまで紹介した4つのケースを整理すると、次のようになります。
| ケース | 転職で変えたかったこと | うまくいったポイント |
|---|---|---|
| 看護師 | 夜勤のある働き方 | 優先する条件を最初に決めた |
| 介護職 | パートから正職員へ 施設介護を経験する | 最初の候補に固執せず比較した |
| リハビリ職 | Uターンして地元で働く | 不足する情報を外部から集め、自分でも確認した |
| 薬剤師 | 調剤薬局から病院へ挑戦する | これまでの経験を次の職場でどう活かすか整理した |
使った求人サービスや転職方法だけを見ると、4人とも同じではありません。
しかし、転職までの過程を見ると、共通している部分があります。
転職がうまくいった人に共通していた3つのこと
①「今回の転職で何を変えたいのか」があった
4つのケースに共通していたのは、転職すること自体が目的になっていなかったことです。
看護師なら「夜勤のない働き方にしたい」。
介護職なら「施設介護を経験して仕事の幅を広げたい」。
リハビリ職なら「地元へ戻って働きたい」。
薬剤師なら「病院という新しい環境で経験を積みたい」。
このように、今回の転職で何を変えたいのかがある程度決まっていると、求人を比較するときの基準も作りやすくなります。
②ひとつの情報だけで決めなかった
求人票、求人サイト、転職エージェント、法人の採用情報。
どれも転職先を探すために役立つ情報ですが、ひとつだけを見て職場のすべてを判断することはできません。
今回の4つのケースでも、求人を見たあとに別の情報を確認したり、見学や面接を通じて実際の職場を確認したりしています。
求人情報は「応募するかどうかを考える入口」と捉え、その先の情報も確認することが大切です。
③最後は自分で確認して決めていた
転職エージェントから情報をもらった場合でも、求人サイトで気になる職場を見つけた場合でも、最後に働くのは自分自身です。
そのため、第三者のおすすめだけで決めるのではなく、
「自分の希望と本当に合っているか」
を確認する必要があります。
見学や面接は、採用されるためだけの場ではありません。
応募者側が職場を確認する機会でもあります。

採用担当として面接をしていると、「何を考えているかよく分からない」と感じる人もいます。
採用されることだけをゴールにすると、入職後に「思っていた職場と違った」となる可能性があります。
事前にその職場について調べ、面接時に質問することで、自分自身の納得感にもつながりますし、採用担当者にも転職についてしっかり考えていることが伝わります。
転職サイトやエージェントは「目的」ではなく「手段」
今回紹介した4つの事例でも、求人の探し方はそれぞれ違います。
これは当然のことです。
応募したい職場がすでに決まっている人と、転職先の候補すら分からない人では、必要な情報やサポートの必要性が異なるからです。
自分で多くの求人を比較したいなら求人サイトが便利です。
応募したい法人が決まっていて、その法人が直接募集しているのであれば、公式採用ページなどから直接応募する方法もあります。
一方、Uターン転職や未経験分野への転職など、自分だけでは情報を集めにくい場合には、転職エージェントが役立つこともあります。
先に考えたいのは、
「今回の転職で何を変えたいのか」「自分だけでは何の情報が足りないのか」
です。
それが分かれば、直接応募・求人サイト・転職エージェントのうち、自分に必要な方法も選びやすくなります。
▶ サービス違いについては、以下の記事でも詳しく解説しています。

面接では「転職理由」と「応募理由」がつながっているかも大切
今回紹介したケースのように、
「今回の転職で何を変えたいのか」が整理できていると、求人選びだけでなく面接でも話がしやすくなります。
たとえば、
「夜勤がつらいので辞めたい」
だけでは、退職理由の説明で終わってしまいます。
一方で、
「今後も看護師として長く働き続けるために、日勤中心で働ける職場へ環境を変えたい」
というところまで整理できていれば、次の職場を選ぶ理由につながります。
大切なのは、転職理由を無理にきれいに見せることではありません。
「なぜ今の職場を離れたいのか」と「なぜ次の職場を選ぶのか」が、自分の中でつながっていることです。
▶ 面接で採用担当が見ているポイントについては、こちらの記事でも詳しく解説しています。

まとめ|成功事例から真似したいのは「使ったサービス」ではなく「考え方」
今回は、私が採用に携わる中で見てきた経験をもとに、看護師・介護職・リハビリ職・薬剤師の4つの転職ケースを紹介しました。
職種も転職理由も違いますし、求人を探した方法も同じではありません。
そのため、
「看護師ならこの方法」
「Uターンなら転職エージェント」
という単純な話ではありません。
4つのケースから参考にしてほしいのは、使った転職サービスそのものではなく、転職先を決めるまでの考え方です。
まずは、
「今回の転職で何を変えたいのか」
を整理する。
次に、その条件に合う求人や職場について情報を集める。
気になる職場が見つかったら、求人情報だけで判断せず、見学や面接なども通じて、自分の希望と合っているかを確認する。
その途中で自分だけでは情報が足りないと感じたら、求人サイトや転職エージェントを利用すればいいと思います。
転職サービスに合わせて転職先を選ぶのではなく、自分が納得できる転職をするためにサービスを使う。
採用する側として多くの転職者を見てきて、これが転職後のミスマッチを減らすためにも大切な考え方だと感じています。

