はじめに
転職活動をしていると、ネットの情報や口コミ、知人からのアドバイスなど、たくさんの「常識らしきもの」に触れると思います。
しかし、医療・福祉業界の人事担当者として10年以上採用に関わってきた経験から言うと、その中には「本当ではない」「誤解されやすい」ものが少なくありません。
この記事では、転職活動でよくある誤解を取り上げ、人事担当者の目線から「実際はどうなのか?」を本音でお伝えします。
少し考え方を整理するだけで、無駄に不安になったり、行動が遅れてしまうのを防げますよ。
誤解①「直接応募より転職エージェント経由のほうが有利」
採用側が本当に求めているのは「直接応募」
「転職エージェント経由のほうが内定率が高い」という話を聞いたことがありますが、そんなことはありません。
病院や施設の人事担当者としては、転職エージェントを通さない直接応募のほうがありがたいのが本音です。
理由はシンプルで、紹介料がかからないから。人材紹介経由だと数十万~100万円以上の費用が発生します。
条件交渉してもらえるから有利?
給与などの条件交渉を売りにしている転職エージェントも多いですが、言いづらいことを伝えてもらえるという意味では便利でしょう。
ただし、実はこれも直接応募で本人から伝えた方が希望は通りやすいです。
高い費用を払ってまで、勤務時間などに制限がある方を採用したいと思いづらいですし、転職時期が半年以上も先であれば、直接応募を待ちたいと思うのが本音です。
半年以上先でもいいから転職エージェント経由で採用するということは、それだけ困っている病院・施設だということです。

特に転職時期がまだ先だという人は直接連絡してみてください。
求人をしていなくても前向きに検討してもらえるかもしれません。
給与については、その法人に一人しかいない職種であったり、個人クリニックなどで2~3人の職員で運営しているところであれば交渉の余地があるかもしれません。
しかし、そういったことでもなければ、交渉されたからといって給与を上げることはしないところがほとんどでしょう。
なぜなら、給与は公正でなければ職員の定着率に関わってくる重要な問題なのに、交渉されたから給与を上げるといったことをしていては、いつか説明ができなくなるからです。
新しく入職してきた人が、「経験も変わらないのに給与が高い」なんてことがあったら納得できますか?
転職エージェント経由が有利になるのは特殊なケース
もちろん、特殊なスキルを持っている人や、非公開求人を狙いたい人には転職エージェントが有効な場合もあります。
ですが、一般的な医療職・介護職・事務職であれば、直接応募のほうがむしろ歓迎されやすいのです。
誤解②「転職回数が多いと必ず不利になる」
人事担当者が見るのは“回数”より“理由と一貫性”
「転職回数が多い=不採用」と思い込んでいる方は多いですが、実際はそう単純ではありません。
人事が気にするのは「なぜ転職したのか」「どんなキャリアを描こうとしているのか」という部分です。
説明できないことがマイナス
たとえば「短期間で辞めてしまったけど理由をはっきり説明できない」場合は、強いマイナス評価につながります。
逆に「キャリアアップのため」「家庭の事情」など、納得感のある理由をきちんと伝えられれば、転職回数自体はそれほど問題になりません。

ただ「キャリアアップのため」では伝わりません!
具体的な内容が伴っている必要があります。
誤解③「資格がなければ応募できない」
医療・福祉は資格必須職も多いが、それだけではない
看護師や薬剤師、理学療法士など資格が必須の職種は確かにあります。
ですが、医療・福祉の現場には「資格不要」で応募できるポジションも多くあります。

看護助手や介護助手、医療補助、事務職など色々あります。
「無資格OK求人」の実態と注意点
無資格で入職できる求人も増えていますが、その場合は「入職後に資格取得を目指せる環境かどうか」を見ておくのが大切です。
長期的に働くうえでは、やはりスキルや資格があったほうがキャリアを築きやすいからです。
誤解④「求人票にすべての情報が載っている」
求人票に書けない“本当の部分”がある
求人票は法律に基づいて書かれているので、どうしても形式的になりがちです。
たとえば「人間関係」「残業の実態」「離職率」など、応募者が本当に知りたい情報はほとんど載っていません。
面接や見学で必ず確認してほしいポイント
だからこそ、応募する前に求人票だけで判断するのではなく、面接や職場見学で以下の点を確認しましょう。
- 実際の残業時間
- チームの雰囲気
- 新人のフォロー体制
- キャリアアップの仕組み

面接で雰囲気や人間関係について聞かれることもありますが、人によって感じ方が違いますし、いくら離職率が低くても「すごくいいですよ~」と断言しづらいのが本音です。可能であれば、ぜひ見学してみてください。
誤解⑤「年齢が高いと転職は難しい」
若手が有利なケースと、ベテランが歓迎されるケース
確かに「若手を育てたい」と考える職場もありますが、医療・福祉業界では ベテランの経験や安定感が評価されるケース も多いです。
特に介護現場では「安心感がある」「指導役を任せられる」という理由で中高年の方を採用したいと考える施設も珍しくありません。
採用側が“年齢より重視しているもの”とは?
年齢そのものより、人事担当者が見ているのは「体力面」「柔軟性」「学ぶ意欲」です。
実際、50代で採用されて活躍している方もたくさんいます。

何でも一から学ぶという気持ちが大切です。
誤解⑥「応募前に完璧に準備しないといけない」
書類や志望動機は“修正前提”で大丈夫
「履歴書を完璧に書けるまで応募できない」と考える方もいますが、それは大きな誤解です。
人事の立場から言えば、応募書類は“最初の入り口”にすぎません。実際には面接のやり取りのほうがずっと重要です。
大事なのは「行動を先延ばしにしないこと」
準備に時間をかけすぎて応募が遅れるよりも、まず応募して動きながら修正していくほうが圧倒的に有利です。
実際、採用は「早く動いた人」から決まっていくケースが多いのです。

見学した1ヶ月後に応募がきたけど、その時点では募集が終了していたなんてことも少なくありません。
まとめ
転職活動には「よくある誤解」がつきものです。
- 直接応募のほうがむしろ歓迎される
- 転職回数そのものより理由や一貫性が大切
- 無資格でもスタートできる道はある
- 求人票だけではわからないことが多い
- 年齢よりも柔軟性や意欲が評価される
- 完璧を目指すよりまず行動することが重要
こうした視点を持つだけで、転職活動はぐっとスムーズになります。
👉 次回は、「条件がいい求人」見極めのための本音ガイド を紹介していきます。